KWA F90〜オーストラリア軍現用ライフルLithgow EF88のガスブローバック…Steyr AUG A3のもう一つの並行進化の形…
オーストリアのステアーAUGは最も成功したブルパップライフルとして評価されていて、最初のユーザーオーストリア軍が1977年にStG77として制式採用したがそれから50年近く、制式ライフルの要求仕様も変化しているにも関わらず細かい近代化はされつつ基本構造はそのままに使用され続けている。
各国がブルパップライフルの可能性に気がついて試作して、その一部は実用化もしたが大部分は自国採用だけにとどまっていて成功したものは少ない。
数少ない成功例のオーストリア ステアーAUGは世界中で使用されているが、中でも1番の大口顧客はオーストラリア軍。
オーストラリア軍ではAUG A1をF88の制式名称で採用し90年代以降主力小銃として配備している。
初期型のF88はほぼステアーのAUG A1オリジナルそのままだったが、使用される環境の違いから要求仕様も変化してくる。
オーストリア軍の予定戦場は主に森林、山岳なのでAUGもそれに考慮したデザインになっていた。
オーストラリア軍の場合想定戦場は森林ではなく、平原、砂漠、さらに海洋上ということでかなり条件が異なってくる。
さらにNATO参加が禁じられており国連軍参加にも消極的なオーストリア軍と違って、オーストラリア軍は国連軍に参加もするし環太平洋の共同軍事作戦のニーズも高まっている。
当然要求仕様も異なってくるので、AuSteyrのライセンス生産を引き受けていたリスゴーという銃器メーカーがF88を改良して近代化する。
Enhansed F88という意味でEF88と名付けられたこのオージーAUGも本家AUGと同じく基本構造はStG77と変わりない。
ただし細かい部分のデザインは大きくリファインされた。
以下本家AUG A2、A3と主な変更点。
1)フラッシュサプレッサーは従来通り14インチ〜20インチ全てのバレルでバードケージ型
2)バレルにフルートが彫られた
3)ストックレシーバーに放熱窓が追加された
4)バレルはワンタッチ着脱式からアッパーレシーバーにヘキサゴンスクリューでガッチリ固定された
5)アッパーレシーバーの右側と下部にピカティニーレールが追加された
6)アッパーレシーバー上部に全通のピカティニーレールが標準装備された
7)コッキングレバーはAUGA2で変更されたデザインからA1のボタン式ボルトフォワードアシストに戻された
8)コッキングレバーは使用しない時に折りたためるようになった
9)ライフルグレネードからグレネードランチャー運用に変わったためSL40ランチャーを取り付けられるようトリガーガードのデザインが変わった
10)AUGA2で採用されたボルトストップレバーが追加された
11)ストックバットラバーにリブがついて補強された
細かい変更がかなりされていることがわかる。
EF88を持つ兵士
EF88にはBFA(オーストラリアではブレットトラップと呼ぶらしい)と
ELCANの1-4倍可変サイトをつけている
オーストラリア軍の標準的な装備
こちらはKWAのF90エアソフトガン
F90はEF88の輸出仕様の名称
(左)Lithgow EF88実銃と(右)KWAのF90エアソフトガン
(上)Lithgow EF88実銃と(下)KWAのF90エアソフトガン
最近はどのエアソフトガンメーカーもプロポーションの捉え方や外観は申し分ない
このような正対写真ではほとんどアラを探すことができないぐらいよくできている
KWAのF90エアソフトガンの左プロフィール
ボルトストップレバーがストックについていることから
AUG A2がベースになっていることがわかるが
コッキングレバーのデザインはAUG A1のスタイルに戻っている
特徴的なのは前に張り出したトリガーガードと全通のピカティニーレール
AUG A1ではサプレッサーは20インチバレルは櫛形、14〜16インチバレルは
チューリップ型のバードケージだったがAusteyrはすべてチューリップ型のバードケージだった
EF88でも標準はどのバレル長もこのチューリップ型バードケージ
バレルにフルートが彫られているのはおそらく冷却効率のため
AUGの最大の特徴の一つだったワンクリックで取り外しができるバレルは
EF88ではアッパーレシーバーにがっちりとねじ止めされて簡単に取り外しできなくなった
強度と想定射撃距離が伸びたことからガタつき要素を一切排除したということか
EF88/F90の最大の特徴はセーフティの変更
AUG A2ではクロスボルトセーフティを全部押し込んでセミ/フル、半分押し込んで
セミオートオンリーだったがEF88では半分押し込むポジションは廃止された
その代わりがこのALO(オートマチックロックアウト)というトリガー下のボタン
引き出すとセミオートオンリー、押し込むとセミ/フルセレクティブになる
マガジンハウスの横にはボルトストップレバーがついているのはAUG A2以降と同じ
AUGは熱がこもりやすいブルパップライフルの欠点を解消するために
熱伝導率が高いマグネシウム合金をアッパーレシーバーに
使用しているがEF88ではストックにも放熱窓が追加された
バレルのフルートとこの窓の追加は相当弾数を
続けて撃つような運用を想定している気がする
EF88/F90のもう一つの特徴はピカティニーレールの標準装備
AUG A2もアッパーレシーバーに斜めレールが追加されているが
EF88ではもっと割り切ったレールがデザインされている
本家AUGよりアタッチメントの自由度が高いのは
環太平洋で米軍や自衛隊、インドネシア、マレーシア、フィリピン軍などとの
共同行動も考えられることからの装備の標準化の結果と思われる
AUGはマルイやGHKからも製品化されているが
このガスレギュレーターの再現がいまいちだった
KWAは3ポジションのレギュレーターの仕組みも再現して
実銃と同じく取り外しもできるようになっている
抜き出したガスレギュレーター
残念ながらレギュレーターとピストンは一体部品で
成形されている(惜しい!)が形はとてもリアル
ガスレギュレーターはガスベント小、ガスベント大、
ガスカットの3ポジションは残っている
70度ほど回せば抜き取れるポジションが再現されている
トリガーガードのインサートを抜き取ればグレネードランチャーのSL40が取り付けられる…
のだが今のところSL40のトイガンはどこからも製品化されていないのが残念
グレネードランチャーSL40を装着したEF88実銃(via. Lithgow site)
ここまで再現してくれたならSL40も付けてみたいけどどこかトイガン化してくれないかな…
AUGのちょっとした欠点は斜めに突き出したコッキングレバー
実銃も平置きするとここが変形の原因になったりで問題だったが
EF88ではここが折りたためるようになった
AUG A2はレバーを倒してボルトフォワードアシストのロックがかかる構造に
なっていたがこれを止めてA1タイプのロックボタンを復活させた
マルイもGHKもボルトフォワードアシストは省略されていたが
KWAはちゃんとこのロックも再現されているのがすごい
コッキングレバーは引き切ったポジションでも上に畳んでホールドオープンできる
エアソフトガンには不要な機能だけどモデルガン的興味の私にはこれは魅力的
分解手順はここから
ストックのテイクダウンボタンを左から押し込む
するとアッパーレシーバー・バレルグループがごっそり抜き取れる
アッパーレシーバーグループからボルトキャリアが抜き取れる
このバレルの根元のスチール削り出しボルトの工作跡
この形状は若干リアルではないのだがこの工作の丁寧さはすごい
KWAは元々KSCの台湾協力工場だったという話も聞いたことがあるが
なかなかの工作精度のメーカーだと思った
このバレルの右側にホップダイヤルが見える
ダイヤルを上に回してホップ強、下に回してホップ弱
ストック・シアボックスの分解
ストックバットの凹み部分を押し込む
次にスリングスイベルピンを抜く…のではなく押し込む
ここは私が勘違いしていたところだった
奥まで押し込むとストックバットがこのように抜き取れる
シアボックスの後ろの角を押し込むとスリングスイベルピンを抜き取れる
そうしたらシアボックスメカがごっそり抜き取れる
スリングスイベルピンは最初に抜くのではなく押し込むのは変更されたのかと思ったら
GHKのマニュアルにも「まず押し込んでストックバットを抜き取れ」と書いてあった
これが正しい手順でGHKは先にスイベルピンを抜いても分解できるが
KWAは実銃と同じく押し込んでストックバットを先に抜き取らないと分解できない
シアボックスのメカ
ハンマーやシアの形状はGHKのAUGの方がリアルなんだけど
KWAのハンマーはローラーをつけたりシアにカフをつけるなど
抵抗を減らして動作を優先する設計になっている
ちょっと感心したのはKWAはダミーだけどオートマチックセーフティ、
またはドロップセーフティと呼ばれる部品が再現されている
これは本体が落下した時に暴発しないようトリガーを
引き切った時でないとシアが外れない仕組みになっている
KWAのこれは効いていないがその部品を再現したのは画期的
ボルトストップレバーが中央に突き出しているのは少しリアルさでアドバンテージ
A2以降で追加されたボルトリリースボタンと連携するコネクターの突起が初めて再現された
GHKはAUG A3と名乗ってRASつきを製品化していたがこれがついていないAUGはA3とは認めない
これを初めて再現したKWAのリアル志向がシビレる…
オートシアの動き(下)はオートシアがハンマーを止めているが
ボルトがオートシアを前に押すと外れてハンマーが少し前進する(上)
この時にシアがフルオートポジションまで後退していたらフルオート射撃になる
(左)Lithgow F90実銃の分解図と(右)KWA F90を分解したところ
部品の構成がかなり実銃に近いのでパッと見たところほぼ同じに見える
最近電動ガンに興味をなくしガスブロオンリーなのはこの分解が好きだから
ボルトキャリア下面
ガスルートの周りを囲むような形状になっていてかなりかっちりした作り
ボルトキャリア上面
ローディングノズルを抑える部品はGHKでは樹脂のブロックだったが
KWAはエキストラクターみたいな形状をバネで抑える凝った作り
全体がリアルなだけでなく動きもスムーズになるようあちこちに工夫が施されている
ボルトキャリア後端
実銃ならファイアリングピンがある位置にノズルリテイナースプリングのフックがある
左右のパイプがリコイルスプリングの入ってるところでここにもシリコンオイルを奢る
緩みがない凝った作りになっている
左右のロッドは実銃なら左のこけし状の先端がボルトフォワードアシストのロックが
かかる部分でコッキングノブに衝突しないように伸縮する仕組みになっている
右はガスレギュレーターのピストンが激突してボルトキャリアを後退させるロッド
ガスガンではボルトのガイドぐらいの意味しかないが形状は本物そっくりに作ってある
KWAのマガジン
ボルトストップレバーの位置がGHKと逆でバルブや
ガスルートの位置や形状が異なるためにGHKとは互換性はない
KWAのマガジンはほとんど流通していないのでどうせなら互換性持たせて
欲しかったなと思うけどメーカーからしたら「知ったことじゃない」話だろうな
同じ台湾メーカーだけどだからこそかな
マガジンに台湾製品の刻印があった
エアソフトガンの刻印はここにしかない
ストックバット
のっぺりしたAUGに対してEF88のストックバットはリブが入っている
組み立てる時の手順
まずシアボックスをストックに固定する
この時にボルトストップボタンの上を抑えてボルトストップを下に下げる
マガジンハウスの中をのぞいてコネクトの突起が
ボルトストップボタンの腕の中に収まっていることを確認する
ここがはまっていないとボルトストップがかからない
シアボックスがはまったら先にスイベルピンを刺して奥に押し込み
ストックバットを取り付けるというのが組み立ての順番
ボルトストップボタンは上を押さえればボルトリリース
下を押さえればボルトストップができる
リロードの時にマガジンを刺したらコッキングレバーを引かないと
いけない操作法が不満が多かったからこれが追加されたらしい
とてもよくできているし動作がスムーズになる工夫もされているのに
動きが硬く最終弾のボルトストップがかからない問題が起きていた
一つはこのローディングノズルがバレルにガッチリ噛み合って固いのが抵抗になっていた
ここを迂闊に削ると別の問題が起きそうなので
何度もこれを抜き差ししてアタリが取れるのを待った
あとはスプリング類がCO2仕様なのか全体的に固いのも原因と思われる
スプリングを数巻切っても良かったが今回は切らないでメインスプリング、
リコイルスプリングを圧縮して放置し動きが軽くなるのを待った
アタリが取れるまで結構慣らし運転をしなくてはいけなかったが
ちゃんとホールドオープンがかかるようになった
微妙な差なんだけどやはり新品のうちは動きが硬いようだ
ホールドオープンしたエジェクションポートにマイクロロッキングラグが
彫刻されたノズルが見えているのがグッとくる
レールがあると何か載せてみたくなるのは鉄道マニアも鉄砲マニアも同じ
そういうデザインなのでKWAのF90にもいろいろつけてみたくなった
2025年5月27日
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